絶えず惹き付けられるこのテーマ、「禅」。
この本は、第一次世界大戦の頃 “An Introduction to Zen Buddhism” という本を書いて(英語で)、西洋文明に対し禅とは何ぞや、と紹介した鈴木大拙博士が自ら日本語訳されたものだそうです。
とても良い本でした。
入門としているだけに、「禅とは何か」といった根本的な問いから、「禅は虚無主義か」「非合理的なる禅」といった章を読む事で、一回読むだけでも禅に対する誤解や偏見を防ぎ、禅と正しく向き合うことができるようになっている本だと思います。
さらに感銘を受けるのは、文章の中に鈴木大拙博士自らの深い経験が滲み出ている点です。
本書では、具体的な禅の修行法や思想、あるいは禅に関連する書物の引用等を用いて多方面から禅についての解説がなされているのですが、著者自身の経験が織り込まれていることで、それらが無味乾燥とした禅の展示物としてではなく、リアリティーをもって読み手に伝わって来るような印象を受けました。
そう、そうなんですよね。
何事も、明確に、確実に何かを理解しようとすると、絶対に「経験すること」が必要なんですよね。
本書が読み手にリアリティーを感じさせるのは、著者が豊富な経験をお持ちの方だからこそだし、おこがましいですが、私がある程度本書の言わんとするところを理解できたのも、居合やヨガ、その他様々の経験をしてきたからだと思います。
もし何かを達成しようと願う人で、純粋に、そして徹底的に経験することの必要性をうっすらとでも感じている人がいるならば、
禅とか仏教とか宗教とか、
そういった言葉にヒステリックな反応をせずに読んでみてはいかがでしょうか。
経験と実践の生涯を生きた先人の足跡が、ここにはあります。
禅学入門
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An Introduction to Zen Buddhism
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