今回のタイ修行、もちろんメインの目的はタイ古式マッサージの習得でしたが、前回も書かせていただいたようにタイはちょうどインドと中国の間に位置する国。ということで、ヨガや武道で何か発見というか、学べることがあればいいな、と密かな期待も持っておりました。
直接的なヨガや武道の技術、というのは見つけられませんでしたが、しかしながらそれらに共通して流れる精神は、幸運にも見ることが出来ました。
それが、ワイクルーという文化です。
タイで見たワイクルー
ワイクルー(師への合掌)は、今回のタイ修行で出会った最も美しいタイ文化の一つです。一番有名なのは、ムエタイ選手が試合前に舞の形で行うワイクルーでしょう。学校では「ワイクルーの日」というのも存在するようです。
タイの人たちは、舞や合掌、お祈りといったワイクルーによって師への感謝を示します。ボクは、偶然迷い込んだローカルのムエタイ道場や、通っていたマッサージスクールでこのワイクルーを見ることが出来ました。
スクールでは、見た、というよりも、毎日一緒にやりました。朝は神棚(?)に向かって全員でお祈り(タイ語わからないので、黙って一緒に正座するだけですが)。マッサージの施術前にも少し合掌して、お祈り。
確かにワイクルーの所作そのものはとても静かで、美しいものだったのですが、ボクはこれがただの踊りや神頼みの類ではないと感じました(一部にはそういうタイ人もいるかもしれないが)。踊りや合掌のカタチを師匠に見せるとか、捧げるだけのものでもないとも思いました。
彼らはこのワイクルーの間に師への感謝の念をもって、師から受けた教えを呼び起こして、試合やマッサージの施術に万全の備えをしているのだろうと思います。
ヨガでも、居合でも
ヨガにも、そして居合にも、ワイクルーのような稽古前後のお祈りや礼の儀式は存在します。
ヨガだったら、ティーチャートレーニングの先生ナクルは、毎日のトレーニングのはじめに”short prayer”といって、少し黙想をする時間を必ず取るようにしていました。自分の心の中にいるマスターに対して祈りなさい、と言われていました。
一番お世話になったヨガスタジオの先生ティナもよく、過去〜現在〜未来へと続く教えに、そしてそれを繋ぐ先生に感謝を、とレッスンの最後に言っていました。
居合でも、稽古の前後に刀礼と呼ばれる礼を、神前に向かって行います。
それら全てに、カタチ以上の深い意味がある。
その事を改めて教えてくれたのが、ボクにとってはタイの人たちのワイクルーでした。
少年ボクサーやマッサージスクールの人たちから見せてもらったワイクルーの精神を、自分も居合の刀礼の中に、ヨガの合掌の中に、ぜひ取り込ませていただこうと思います。
とはいえ、ボクはお客様とのレッスンの中で合掌をする時、「ボクに感謝してくださいよー!」などという意図は全くありません。
ただ、無言で手を合わせながら、ご自身がお稽古を通して覚えられたことを大切になさってください、という意味でやらせていただくだけです。
どうぞご理解のほどを。
合掌